Seikomatic Archive

Original:2013/12/22
Last Update:2013/12/23
Japanese text only


外装(ケース・文字板)、機械の組み合わせバリエーションの多彩さから「詳細な全貌はいまだ判然としない謎のモデル」とさえ言われるグランドセイコーセカンドモデルの謎に迫る。

グランドセイコーセルフデーター 35石

世界の時計セイコーの代表品としてご愛用いただいてまいりましたグランドセイコーが、装いも新たに高級カレンダーつきクロノメーター優秀級の規格に合格した最高の精度、便利な秒針規正装置、微動緩急調整装置、セイコー独自の日付早送り装置、これらの諸機構が50メートルの水圧に耐える防水ケースにガッチリと保護されています。品格+実用、最高級の紳士にふさわしい最高級の時計です。

小売価格 SS側(WP50)27,000円

(セイコーニュースNo.68:1964年2月号より引用)

この時計は国際的に権威のあるクロノメーター優秀級規格による厳しい試験に合格した最も精度の高い時計です。この時計の基礎ムーブメントはグランドセイコー25石を使用し、カレンダー装置が新たに加わりました。しかも、日付修正は針を回さずに簡単に合わせることの出来るセイコー独特の早送り方式です(特許No.309752)。機械体も高級腕時計クロノメーターにふさわしく、50メートルの水圧に耐えるケースに納められています。また、高い精度をより生かすため、秒針規正装置、微動緩急装置をそなえています。

(セイコーウォッチ技術解説:1964年2月号より引用)

グランドセイコーセルフデーターのケース素材は次の3種類が存在するが、今回は「ステンレススチール側」に限定して考察したものである。
1.ステンレススチール(SS)、2.ゴールドキャップ(GC)、3.純金(18K)
何れも管理人Kによる独自の個体調査結果(個体数:113)からの考察であり、製造から約50年を経過している個体に於いては修理の過程で
裏蓋交換、ケース交換、文字板交換、機械の入れ替えが行われた個体も含まれていると思われるが、全体の流れからの考察結果であり、
『これが正しい組み合わせである』と主張するものではない。

1.最初期製品

初代グランドセイコーの発売から3年余り、カレンダー付き腕時計の普及により、最高級機にもカレンダー機構を搭載する時が来た。
クラウンのキャリバー560をベースとする初代グランドセイコー25石キャリバー3180に日付機構を搭載したキャリバー430、製品名グランドセイコーセルフデーター35石(略号GSS)。

当時のセイコーニュース1964年2月号に「近日発売」と掲載されているが、最古確認固体のケースシリアルNoの頭2桁は「38」(1963年8月製造)である。

文字板は、SD(Special Dial)文字板。当時の最高級機としては当然の仕様であるが、この当時の他の機種に於けるSD文字板の使用状況を見ると、何れも1963年後半には既にAD(Applique Dial)文字板に移行している。
(セイコーマチック603−20石、30石。同セルフデーター394−24石、ロードマーベル、ライナー等の個体調査結果による。)

グランドセイコーセルフデーターに於けるSD文字板の分布は、1963年8月〜1964年2月であり、他の機種のAD文字板化の流れに反している。
これは、『
最高級機には当然SD文字板を採用する』との暗黙の了解があったのか、または、文字板のみ1963年前半に予め作成され、1963年後半にケース、機械と組み上げられた結果であるものかは謎である。

グランドセイコーセルフデーター(最初期SD文字板)
1963年11月製造
ケース番号:43999
キャリバーNo:430
文字板:MADE IN JAPAN
GSS14H380-SD(Chronometer)

2.初期製品

グランドセイコーセルフデーターに於けるAD文字板化は、1964年3月頃と推測される。
ケース番号43999、キャリバーNo.430は継続して使用されている。

グランドセイコーセルフデーター(AD文字板)
1964年3月製造
ケース番号:43999
キャリバーNo:430
文字板:MADE IN JAPAN
43999T0(Chronometer)

3.中期製品

グランドセイコーセルフデーターに於けるAD文字板の植字マークを印刷しなくなった時期は、1965年1月頃と推測される。

1964年5月頃から植字マークの印刷が順次廃止されており、セイコーマチックウィークデーター(6218−8971)に於いても植字マークの印刷は1964年末頃まで確認しており、グランドセイコーセルフデーターも、この流れに従って植字マークの印刷を廃止している。

お知らせ「今後の補修用文字板のご注文は下記の要領でお願いいたします」
SEIKO ニュース 1964年5月号 NO.71 より引用
現在植字文字板には6時上に植字マーク(SD、AD、ED)をほどこしておりましたが、これからは順次植字マークをはずし図のように文字板番号の後に植字の記号のみを印刷することに致しました。
従ってご注文にあたっては、従来の植字マークによる見分けが出来なくなりますので、ご面倒でも文字板番号のあとに植字記号があるかないかをごらんいただき、型、石数ご指定の上、ご注文願います。

文字板記号は「5722−9990T AD」。12時下の「Chronometer」表記は継続し、分布は1965年1月〜1966年6月で、同時にキャリバーNo.も従来の430から5722Aに呼称が変更されている。

ケース番号も5722−9990に変更となった。
1965年10月以降、裏蓋の「WATER PROOF 50」の表記が「WATER PROOF」に変更されているが、理由は不明。
セイコーマチックウィークデーター(6218−8950)に於いても同様に、1965年8月まで「WATER PROOF 50」の表記が1965年9月から「WATER PROOF」になっている。

下記の画像個体は、「1965年 東京芝浦電気株式会社 二十五年勤続表彰記念」の特注品であるが、驚くべきことに一企業からの特別注文品に対してケース番号「5722−9970」が割り当てられている。
これは、既存の「5722−9990」ケースに追加刻印を施したものではなく、個別にケース番号を採番し、図面を起こし、型から製造したものであると推測される。
ただし、当時の「セイコーウォッチ外装部品セット表」には「5722−9970」の記載は無い。


東芝の記念品は、「東芝商事」等の関連会社名の刻印があるものも確認しているため、当時、相当の個数が発注されたものであろうと推測される。


東芝の特注品は、1965年〜1971年までの存在を確認している。

1965(昭和40)年 グランドセイコーセルフデーター(GSS)
1966(昭和41)年
1967(昭和42)年 57グランドセイコーカレンダー(57GSC)
1968(昭和43)年
1969(昭和44)年 45グランドセイコーカレンダー(4522−8000)
1970(昭和45)年
1971(昭和46)年
グランドセイコーセルフデーター(中期)
1965年5月製造
ケース番号:5722-9970
キャリバーNo:5722A
文字板:JAPAN
5722-9990T AD(Chronometer)

4.後期製品

1966年頃に発生したクロノメーター機のGSへの意匠変更問題を受け、1966年7月頃に文字板から「Chronometer」表記を外し、「GS」表記に変更した。当マイナーチェンジに際し、文字板の石数の表記も無くなっている。

機械も1966年6月頃から5.5振動化された5722Bに変更となっている。

1966年10月頃に製品名も「57グランドセイコーカレンダー(略号57GSC)」へ呼称変更を行った。
ケースは、5722−9990(獅子メダル)が1966年11月頃まで継続して使用されている。(在庫が無くなるまで引っ張ったものかも?(^_^;))
1966年12月頃、ケース番号が5722−9991(GSメダル)に変更されている。

「SEIKOウォッチ・テンプ振動数変更のお知らせ」
SEIKO セールス 1966年8月号 NO.98 より引用
グランドセイコーセルフデーター(GSS)、ロードマーベル(LMK)のテンプ振動数が5振動(18,000回時)から5.5振動(19,800回/時)に変更され、高精度の保持が一層効果的になります。(中略)
グランドセイコーセルフデーター、ロードマーベルについてはキャリバーナンバーによって振動数を判別してください。(時計の外観では判別できませんからご注意ください)
なお、SEIKOの紳士用腕時計は殆ど5振動ですが、上記の2機種の他、次の3機種が5.5振動を採用しております。

セイコーマチック クロノメーター 6246 39石 6246A
セイコーマチック クロノメーター 6245 35石 6245A
セイコーマチック ウィークデーター MAWK 39石 6216A
 

57グランドセイコーカレンダー(最後期)
1968年2月製造
ケース番号:5722-9991
キャリバーNo:5722B
文字板:JAPAN
5722-9990T AD

ステンレススチールケース製品に於ける製造年月別のケース、機械、文字板の組み合わせパターンを管理人Kが調査した個体データによると、ケースが4種類、機械が5種類、文字板が5種類を確認しており、時系列に妥当な組み合わせが存在する。
(ただし、『これが正しい組み合わせである』と主張するものではない。)

ケース番号

キャリバーNo

文字板記号

備 考

1963

(昭和38)

4

未確認
 

5

 

6

 

7

 

8

43999

WATER PROOF 50

(獅子メダル)

     

430

MADE IN JAPAN

GSS14H380-SD

(Chronometer)

 

9

       

10

       

11

       

12

       

1964

(昭和39)

1

       

2

      セイコーニュース2月号の新製品紹介に掲載

3

     

MADE IN JAPAN

43999T0

(Chronometer)

 

4

       

5

       

6

       

7

       

8

       

9

       

10

       

11

       

12

       

1965

(昭和40)

1

5722-9990

WATER PROOF 50

(獅子メダル)

   

5722A

5722-9990TAD

(Chronometer)

 

2

     

3

     

4

     

5

      セイコーニュース5月号のお知らせに「文字板植字マークの印刷廃止」
東京芝浦電気株式会社 二十五年勤続表彰記念(5722-9970)

6

       

7

       

8

       

9

       

10

 

5722-9990

WATER PROOF

(獅子メダル)

  裏蓋「WATER PROOF 50」の表記が「WATER PROOF」に変更

11

       

12

       

1966

(昭和41)

1

       

2

       

3

       

4

       

5

      東京芝浦電気株式会社 二十五年勤続表彰記念(5722-9970)

6

     

5722B
(CHRONOMETER)

 

7

     

5722B

5722-9990TAD

(縦長GS)

 

8

      SEIKOセールス8月号に「SEIKOウォッチ・テンプ振動数変更のお知らせ」掲載

9

       

10

      「57グランドセイコーカレンダー」に製品名変更

11

     

5722B
(JAPAN)

 

12

     

5722-9991

(GSメダル)

5722-9990TAD

(GS)

 

1967

(昭和42)

1

       

2

       

3

       

4

       

5

       

6

       

7

       

8

       

9

       

10

       

11

       

12

       
1968

(昭和43)

1        
2        
3
未確認
 

全貌に迫ることは出来なかったかも知れないが、今回の個体検証により少なくとも「謎のモデル」では無くなった。(^_^)v

 

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