62GrandSeiko
6245/6246

Original:2004/05/23
Last Update:2012/01/04
Japanese text only


製品名:62グランドセイコー

キャリバーNo:
 6246A(39石)
 6245A(35石)

略称:
 62GAW 39石(ウィークデーター付)
 62GAC 
35石(カレンダー付)

発売開始(セイコー社資料より):1966年7

最古確認個体:1966年10月

最新確認個体:1968年7月

1.特徴

グランドセイコーは、セイコーが技術の粋を結集し完全な品質管理のもとに製造した最高級腕時計です。
(セイコーウォッチカタログ ’68/No.1より)

グランドセイコー検定基準
これと同じ広告が昭和42年12月朝日新聞そのほか各紙に掲載されました。

 「自動巻の最高級品」=「腕時計の最高級品」として発売したセイコーマチッククロノメーターでしたが、発売早々に重大な問題が発生してしまいました。
 第一のセールスポイントであった「クロノメーター優秀級相当の精度」、その精度をメーカーが保証する「クロノメーター検定テスト合格証」まで添付して発売したことがスイス、フランス、ドイツによって組織された「国際クロノメーター管理委員会(CICC)」から注意を受けてしまったのです。

自社検定した製品に「CHRONOMETER」表記を行ってはならない。

 公的機関としてのスイスの「クロノメーター協会」が検定に合格したものだけが「CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」を表記できるのであって、製造会社がこれを保証する物では無い。ということらしいです。
 要するに「セイコーはん、うちらに断りもなく勝手にクロノメーターて言うてもろうたら困りまっせ。」ってな事だった様です。

 セイコー側としても勝手に付けたワケではなく、当時の日本に検定する公的機関が存在しなかったため、自社で厳重な品質管理、製品検査の上で合格したものを販売していたのですから、半ば逆切れ状態だったことでしょう。
「スイスクロノメーターがなんぼのもんじゃい。それより上を行ったろうやないけ!。」
(注:↑これは、筆者の勝手な想像です)
 更には「獅子マークも、やめたれ!。GSや!じいえす!!。」ってなカンジだったのでしょうか?。(これも、筆者の勝手な想像です)

というわけで、1966年当時の各クロノメーター機は、急遽GSに意匠変更を行うことになりました。

グランドセイコーセルフデーター(430、5722A) 57グランドセイコーカレンダー(5722B)
キングセイコークロノメーター(4420A) 44グランドセイコー(4420B)
セイコーマチッククロノメーター(6245A/46A) 62グランドセイコー(6245A/46A)

「国際的ウォッチクロノメーター検定基準」の表記も「グランドセイコー検定基準」に変更になりました。

検 定 項 目
優秀級規格(62クロノメーター)
グランドセイコー検定基準
5姿勢の平均日差
−1.0〜+10.0 sec.
−3.0〜+6.0 sec.
5姿勢の平均日較差
  2.2 sec.
最 大 日 較 差
  6.0 sec.
水 平 垂 直 の 差
± 8.0 sec.
最 大 姿 勢 偏 差
±12.0 sec.
±10.0 sec.
一 次 温 度 計 数
± 0.6 sec.
± 0.6 sec.
二 次 温 度 計 数
± 0.6 sec.
復  元  差
± 5.0 sec.
± 5.0 sec.

日本工業規格(JISB7001)によって定められている時計の精度を示す用語

a、b
日差・平均日差
24時間経過したとき標準時間に対する進み・遅れを言い、また、平均日差というのは連続した日差の平均をいいます。この差が0に近い程良く合う時計であることはいうまでもありません。
日 較 差
ある日測定した日差と翌日同一姿勢で測定した日差との差をいいます。この値が小さい程精度の良い時計といえます。
姿 勢 差
時計をある姿勢に置いた場合の日差と他の姿勢に置いた場合の日差の差をいいます。実用上三方(文字板上、三時位置下、九時位置下)を見てあまり大きな差がなければ十分です。
f、g
温度計数
温度摂氏一度変化したときの日差の進み・遅れをいいます。最近はヒゲゼンマイの材料が改良され、実用上ほとんど問題はなくなりました。
復 元 差
当初における平均日差から、ある期間たって同一条件で測定した平均日差のことをいいます。この値が小さい程安定した時計といえましょう。
※歩度:単位時間あたりの進み・遅れをいい、通常はこれを24時間換算していいます。
タイムグラファーなどの読みがこれになるわけです。歩度と日差は似ていますが、普通この二つの値は違っています。

当時の製品カタログからも「クロノメーター」という表現が削除されています。

セイコーウォッチカタログ '66/No.1(7月)の記述内容
セイコーウォッチカタログ '66/No.2(12月)の記述内容
クロノメーター調整された文字通り”世界の時計SEIKO”を代表する腕時計です。
秒針規正装置、緩急微調整装置のほかに50m防水機構を備えています。

文字通り”世界の時計SEIKO”を代表する腕時計です。
秒針規正装置、緩急微調整装置、防水機構を備えています。
 
6245、6246の製品名は「セイコーマチック」となっている。
SSケース製品のみ掲載。

キングセイコークロノメーターも、SSケース製品のみ掲載。




6245、6246の製品名は「グランドセイコー」となっているが、掲載されている写真の文字板は「SEIKOMATIC」である。
また、GCケースの製品が追加になっているのが判る。

グランドセイコーセルフデーターの「セルフデーター」の表記も削除となっている。何故??
こちらも、18Kケースが無くなって、GCケースになっている。
「50m防水」の表記も削除となっている。

 その後、スイスの「国際クロノメーター管理委員会(CICC)」との話し合いと関係者の尽力により1968年、日本にも公的なクロノメーター検定機関である「日本クロノメーター検定協会」が発足しましたが、グランドセイコーはその検定を受けることはありませんでした。

2.外装

ものの本では、62グランドセイコーは、セイコーマチッククロノメーターと外装が同じ「謎のモデル」などというのが定説になっていますが、果たしてそうなのでしょうか?

 当時は「手巻=高級品」「自動巻=実用品」という認識が変化しつつあった頃で、マチッククロノメーターは自動巻の最高級品として発売されましたが、「グランドセイコーの自動巻」が欲しいという消費者の声は多かったのではないでしょうか?
 更には、営業/販売店サイドからも『自動巻の最高級品が「マチック」じゃ売れしまへん。セイコーの最高級品は「じいえす(GS)」やないとあきまへんで!。』という声も挙がったのではないか?と、推測します。
 マチックファンとしては、ちょっと残念な気もしますが。(^_^;)
これは、現在の国産ヴィンテージ市場でも、やはり62GSが人気で、ひと昔前はマチッククロノメーターなどは存在も知られていませんでした。(時計屋のオヤジさんでも御存知無い方がほとんどでした。)

 また、一方では、上記の「クロノメーター」事件(表記の廃止)が1966年中頃。1967年一杯は62GSとして販売。翌68年の「61GS」発売までの「つなぎ」的な製品だったのかも知れません。
67年後半には次期新製品「61GS」の生産に入っていたでしょうから、新たにコストを掛けてケースデザインを起こすまでもなかったのでしょう。
 しかし、まとまったロットで62GSの外装(ケース、文字板)を作ってしまった後だったものと思われます。と申しますのは、最近でも62GS(マチッククロノメーター)のデッドストックケース、デッド文字板は良く見かけるからです。

(1).ケース

ケースの種類は、SS、GCの2種類のみ。「SEIKO外装部品セット表」には18Kの記述があるが、未確認。

クロノメーターからGSへの過渡期であったことから、裏蓋に獅子メダルの文字板「GS」も存在するが、57GSでも同様の組み合わせが存在する。

(2).風防

オリジナルは角が立った風防。(デッドストックの個体、およびセイコー時計資料館にて、現物を確認。)
番号は「Ref.No.40TR、ガラス番号:320T01AN」。

(3).文字板

1999年に徳間書店から発売された「THE SEIKO BOOK−時の革新者セイコー腕時計の歴史−」によりますと、62GS用文字板の新デザインも各種考案されたようです。
 プロトタイプ文字板では、12時下に61GS−VFAのような「GRAND SEIKO」の切り抜きロゴと「HIGH PRESISION」の文字が、6時下にはロンジンの腕時計にも似た「★」が三つ並んでいます。
 しかし実際には、マチッククロノメーターの12時下の「CHRONOMETER」表記をやめ、6時上に「GS」マークを付けたのみの比較的おとなしいデザインとなりました。

「GS」マークは、57GSの文字板と同様に初期型が縦長となっている。
6246においては、金(GC)、銀(SS)共にインデックス、針の形状は2種類存在することを確認。
6245は、6245-9000TADの1種類のみしか確認していない。
ADのみ存在。

6246-9000TAD
6246-9010TAD
マチッククロノメーターとインデックス、針は同じデザイン。
12時下「CHRONOMETER」→「AUTOMATIC」
6時上にGSマークが付き、石数の表記なし。
62GSの後期モデルと思われる。
翌年発売の61GSに似たデザイン

インデックスの上面はつや消し黒。
長短針の中央にも黒線が入っており、秒目盛りも9000と微妙に異なる。

(4).日、曜車(日付、曜日表示)

日付窓の大きさ、および日付字体は1種類のみ。
曜日は、3時位置に「MON」の様に表示。

3.機械

(1).基礎輪列

ロジュウムメッキが施され、個体番号の刻印あり。
香箱受けと2番受けが1体パーツのみ確認。
香箱真に受け石を採用。
セイコーマチッククロノメーター6245A(35石)、6246A(39石)と自動巻のローターを除き、同じ部品を使用している。

Cal:6245A(前期型:1966年9月製造(注))
Cal:6245A(後期型:1967年7月製造(注))
日車(カレンダーディスク)下に9石。
石を小径のものに変更し、配置も変更。
(注)製造年月は、文字板裏のスタンプより推定。62GS、セイコーマチッククロノメーターにおいてはケース、裏蓋交換の例が多いように感じられ、ケース裏蓋刻印による製造年月は正確で無い場合があるため。

 地板裏面は独特の梨地仕上げがなされており、6216Aと同じ地板のようである。
9石の形状、配置変更は83マチックカレンダー39石でも前期/後期で異なる
また、6216Aにおいても1966〜67年頃に変更されているようである。

上記の仮説(1966年:前期地板、67年:後期地板)が正しいならば、セイコーマチッククロノメーターにおいては1966年末までしか製造されていないため、前期地板しか存在しないはずである。今後、マチッククロノメーターの調査を継続したい。(2007/4/21:追記)
比較的初期の製品と思われる1965年7月製のセイコーマチッククロノメーター(6246A)を確認したところ後期地板でしたので、仮説は崩れました。(2007/7/15:追記)

(2).緩急微動調整装置

6218C、6216A、グランドセイコーカレンダー(5722B)と同様の歯車式機構を搭載。

(3).自動巻機構

回転錘(ローター)に衝撃吸収切り込み有のみ確認。
ローター刻印は「XX JEWELS」「SEIKO」のみ。

4.製造年月(注)による分布調査

(2008.3.2現在 検証個体数:39)

キャリバー
ケース
1966
1967
1968
10
11
12
10
11
12
10
11
12
6246
9000
SS
 
 
   
 
   
 
     
 
 
 
 
                         
9001
SS
           
                     
         
9001
GC
               
 
 
 
 
 
 
                         
6245
9000
SS
       
 
 
 
 
       
 
 
 
                         
9000
GC
     
                                                   
9001
SS
       
   
 
                     
         
9001
GC
                   
 
                                     

○:存在を確認した個体

(注)製造年月は、ケース裏蓋シリアルNoからの推測に過ぎない。
「裏蓋」、「文字板」叉は「ケース自体」が後年
交換されている個体もあると思われるため。

7.当時の価格

ペ ッ ト ネ ー ム
CAL No. 石数
側 質
防水
現金正価
62グランドセイコー(ウィークデーター付)39石
6246A 39石
GC/SS
防水
44,000
SS/SS
38,000
62グランドセイコー(カレンダー付)35石
6245A 35石
GC/SS
41,000
SS/SS
35,000

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