Seikomatic Weekdater
6216

Original:2004/04/04
Last Update:2011/02/12


製品名:62セイコーマチックウィークデーター39石

キャリバーNo:6216A(39石)

略称:62MWK

発売開始(セイコー社資料より):1966年2

最古確認個体:1965年9月

最新確認個体:1967年10月

1.特徴

セイコーマチックウィークデーター35石(6218C)をベースに改良、若干の高振動化(5→5.5振動)を実施し、上位機種にした製品です。

SEIKOウォッチ今月の新製品(セイコーニュース:1966年2月)より
高い精度、さらに便利な数々の付加機能を持つ62MWKは、紳士用腕時計の中でもハイクラスにランクされるものです。
日付の修正はSEIKO独自の3段式リュウズ、信頼される防水ケース、シャープなデザイン、一つ窓に並んだ曜日と日付、さらにセコンドセッティング装置は62MWKの高い精度とマッチして、高級実用時計としてお客様に喜こばれることでしょう。
特にすぐれた時計を持ちたいとおっしゃるお客様にぜひおすすめください。
こんなセールストークはいかがでしょう
 
●精度の点、持って便利な点でもっともご満足いただける時計です。
 ●秒針規正装置をはじめ合理的に使われている、39個のルビーがこの時計の精度を証明いたします。
  標準小売価格 SS側………………………………………………23,000円

 個人的には、「初代グランドセイコー(3180)」と「クラウンスペシャル(341)」の関係に似て「セイコーマチッククロノメーター」に「検査合格証明書」を付けずに、「お手ごろ価格」ながら「ノンクロノメーターの最上位機」という位置付けで販売したのではないか?と思っています。

2.外装

6216の外装デザインは、62系の最終進化型製品としての有終の美を飾るに値する素晴らしいものだと思います。

以下、私の勝手な推測を元に、当時のデザイン検討の経緯を考証/再現してみたいと思います。

 「セイコー自動巻の最高級品」「自動巻初のクロノメーター」を製作するにあたって、6218−8950の外装デザインが採用を却下された(と思われる経緯は、6218−8950のページに書きました)。

 その後、クロノメータ機の次なる外装デザイン候補は「2案」作成されたのではないか?と思っています。
 (複数案が作成されたのかも知れませんが、最終選考の「重役審査」まで残ったデザインが2案、と言っても良いでしょう。)

 1つは、実際に「マチッククロノメーター」として製品化された6246−9000の形状。
もう一つが、この6216−9000だったのではないでしょうか?
 その根拠は、これも6218−8950のページに書きましたが、「最高の外装デザイン」を実現させるためには、機械の改良を待たなければならならなかったことに起因します。
 6216は、カレンダーディスクの段差解消のため、文字板に対して「曜日ディスクを下げる」のとは反対に「日付ディスクを上げる」という逆転の発想でこれを実現しました。

曜車と日車の段差がある6218

日車を上げて曜車との段差を解消した6216
 ところが、更なる問題が挙がって来てしまいました。
 日車を曜車と同じ面まで上げると、文字板と接近し過ぎることになり、日付曜日窓枠の厚みが取れません。(左下の画像:6218−8950の曜日窓を参照)
 これでは、最高級の文字板デザインとして要求される「風格を醸し出す」ことが出来ないのです。

6218−8950

6216−9000

6246−9000
 日付曜日窓枠の厚みを確保するためには、文字板自体を風防方向に上げる必要があります。
 すると、今度は文字板が風防方向に対して接近してしまい、ケース側面との位置関係が窮屈な印象を与えてしまうのです。

 これに対する外装デザイン上の解決策が、2案出されました。
1.ボンベ型文字板を採用する。(6216−9000)文字板外周部分に曲面を付け、文字板とケース側面の位置を調整。
2.段付き型文字板を採用する。(6246−9000)文字板外周部分に段差を付け、文字板とケース側面の位置を調整。

 「ボンベ型」と「段付き型」の従来からある最良のデザイン手法で解決した結果として示された2つの形がこの6216と6246だったのです。

ボンベ型:6216ー9000TAD

段付き型:6246−9000TAD

 そして6216は「クロノメーター機」のデザインには惜しくも採用されなかったものの「ノンクロノメーターの最上位機」として、6246とほぼ同時期に発売されたのです。

上記の仮説に基づいて考えれば、6216の製品としての位置付けは充分に納得がゆくものではないでしょうか?

追記
6216のGCケース(6216−9010)を2004年3月現在、現物はもちろん、資料画像さえ確認していないため、上記「クロノメーター機用外装デザイン候補」は「2案だった」という仮説は、実はGCケースデザインを含む「3案だった」のかも知れません。
風防の部品番号が6246と6216のGCケースは同一であることから、類似の形状かも知れません。
未だ見ぬ6216−9010は、どのような素晴らしい造型をしているのか?想像するだけでも楽しいものですね。

(1).ケース

ケースの種類は、SS(6216−9000)、GC(6216−9010)の2種類のみ。そのうち、GCは未確認。
GCケースは、「SEIKO外装部品セット表」によると、セイコーマチッククロノメーター(6245−9000)のケースと同型の「テンションリング付き風防」が採用されている(Ref.No.40、ガラス番号:320T01ANで同一)。
裏蓋のデザインが「イルカ刻印」(エッチング)と「イルカメダル」仕上げの2種類が存在。
イルカ刻印(エッチング加工)が最初期製品と思われ、6218等の刻印よりも彫が深い。

イルカ刻印(1965/9〜11)
イルカメダル(1966/1〜)

初期のイルカ刻印は、コストの割に高級感に乏しく、加工コストが比較的安価で、
高級感が出せるプレス加工のメダル仕上げに変更になったのではないか?
6218のGCケースも、イルカ刻印タイプ(6218-8970)から
後に、イルカメダルタイプ(6218-8971)に変更になっている。

初期製品(前期文字板/裏蓋イルカ刻印)は革バンド付きで、中期製品(前期文字板/裏蓋イルカメダル)以降は金属バンド付きとなる。
後期製品(後期/裏蓋イルカメダル)は、金属バンド付き。
(SEIKOウォッチカタログ、およびデッドストックと思われる現物で確認。)

(2).風防

オリジナルは角が立った風防。(デッドストックの個体、およびセイコー時計資料館にて、現物を確認。)
しかし、実際に見かけるものは、角が丸い風防が付いている個体が多い。
現在入手可能な社外品の補修用部品は、適合製品であっても角が丸い形状の物しか製作されていないようだ。2009/12/30修正
「SEIKOウォッチ外装部品セット表−1975−」記載のケースNo6216−9000に適合する番号は「Ref.No.21、ガラス番号:320W04AN」であるが、角が丸いもので、本来の角が立った風防の番号は「Ref.No.35−F、ガラス番号:320W04AN」、または「320WS04」である。
角が立ったSEIKO純正部品を入手したことから、本来の風防番号が判明した。2009/12/30追記

6218−8950の純正風防が「Ref.No.36−TR」であることからも6218−8950と6216−9000が時系列に設計(採番)されたことがわかる。2009/12/30追記

(3).文字板

インデックス、針の形状により、前期型(6216−9000TAD)、後期型(6216−9010TAD)の2種類を確認。ADのみ存在。SDは、未確認。
前期型の針の形状はセルフデーター規正付き(395)と類似の形状であるが、尾部にカットが入った6216独特なもので、歴代セイコーの手巻き、自動巻製品を通じて唯一の形状である。

後期型の針、文字板インデックス中央部には黒い線が入っている。(黒い線は樹脂製の別パーツ)
更にインデックス上面は「ノコギリの歯」状の細かい加工が施されている。

「Seikomatic」のロゴマークは、前期9000は筆記体、後期9010はブロック体、GCケース用は未確認。
(後期文字板9010は、セイコーウォッチカタログNo.1増補版(1966年9月)に登場。)

(4).日、曜車(日付、曜日表示)

日付窓の大きさ、および日付字体は1種類のみ。
曜日は、3時位置に「MON」の様に表示。

3.機械

(1).基礎輪列

ロジュウムメッキが施され、6218(35石)より「面取り」部分が磨き上げられた高級仕上げ仕様となっている。
自動巻機構の「伝エ受」部分に個体番号の刻印あり。
香箱受けと2番受けが1体パーツのみ確認。
香箱真に受け石を採用。
6218(35石)より増加した4石は日車(カレンダーディスク)下に2石、香箱車上下穴石に2石。

Cal:6216A(機械地板表面)
Cal:6216A(機械地板裏面)
日車(カレンダーディスク)下に9石。
香箱車穴石(上下)に2石追加。
 6218Cより、更にカレンダーディスク下に2石が追加され、「振り落ち」対策が強化されている。

 また、香箱真の上下軸受けは従来の62系の「弱点」であり、長期使用に伴いだ円型に磨耗が進行する傾向にある。
 ウィークデーター400から6206への進化の過程で強化された部分ではあるが、さらに穴石を2石追加し、磨耗対策が強化されている。
 香箱軸受けに石が入っている機種は、手巻きグランドセイコー(3180、430、5722A、B、4420B)キングセイコークロノメーター(4420A)。
 自動巻では、後のマチック83系など。

 地板裏面も独特の梨地仕上げがなされており、ノンクロノメーターの最上位機にふさわしい仕上がり。

(2).緩急微動調整装置

6218C、セイコーマチッククロノメーター(6245A、46A)グランドセイコーカレンダー(5722B)と同様の歯車式機構を搭載。

(3).自動巻機構

回転錘(ローター)に衝撃吸収切り込み有のみ確認。
ローター刻印は「SEIKO」のみ。

6216A(39石)
回転錘(ローター)を外した状態

(4).製造年月(注)による分布調査

(2007.7.1現在 検証個体数:36)

製造年月
1965
1966
1967
10
11
12
10
11
12
10
11
12
前期文字板
裏蓋イルカ刻印
 
 
 
前期文字板
裏蓋イルカメダル
 
 
 
 
   
後期文字板
裏蓋イルカメダル
                 
 
 
 
 
 

○:存在を確認した個体

(注)製造年月は、ケース裏蓋シリアルNoからの推測に過ぎない。
「裏蓋」、「文字板」叉は「ケース自体」が後年
交換されている個体もあると思われるため。
 調査結果からの推測
・裏蓋イルカ刻印→イルカメダルへの移行時期は1966年1月?
・前期文字板の製造終了は、1966年8月
・後期文字板の製造開始は、1966年9月

4.当時の価格

ペ ッ ト ネ ー ム
CAL No.
石数
側質
防水
現金正価
62セイコーマチックウィークデーター
6216A
39石
SS/SS
防水
23,000
GC/SS
??

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