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グランドセイコー2匹の獅子の謎

Original:2004/05/30
Update:2009/04/09


グランドセイコーの裏蓋には「獅子の紋章」のメダリオンが付いています。

初代グランドセイコーの獅子メダル
★GRAND★SEIKO★

 獅子には、ライバルがいました。

時は1960年。とある会議室では、初代グランドセイコーの裏蓋に刻まれる意匠について話し合いがおこなわれていました。候補はふたつ。「時計の王者」を目指す意志を表した「獅子」と、「時間の正確さ」を象徴する「鐘」でした。セイコーのすべてを注ぎ込んだこの時計にふさわしいのはどちらか。さまざまな議論の末に採用されたのは、「獅子」でした。そして今、獅子の紋章はグランドセイコーの象徴として、皆様の心の中にも刻み込まれています。
(2001年グランドセイコー商品カタログより引用)

* * * * *

初代グランドセイコーを始め、歴代クロノメーター機の裏蓋には「獅子の紋章」が付けられています。

ライナークロノメーター
(1963年)
グランドセイコーセルフデーター
(1963年)
キングセイコークロノメーター
(1964年)
セイコーマチッククロノメーター
(1966年)
★がないので、ちょっと寂しげな獅子
刻印が薄くなり、ややお疲れの獅子
裏蓋にやや厚みが有る44KSCM
自動巻のため、裏蓋にも厚みがある。

これらのメダルは「金張り」製のようで、酷使されたものはハゲて穴が開いてしまいます。
カワイソー(T_T)

メダル自体が欠落しているものも見かけます。
獅子メダルの裏には、指紋のような渦巻きが彫ってあります。

純正風防の紙袋にも獅子を発見しました!!
「LN32W」の記号から、ライナークロノメーター用と思われます。
2009年4月9日:追加

ハゲや欠落を補修した物もよく見かけますが、その多くは「複製品」です。

18金ムク材を腕のある職人さんが彫って製作した「豪華な獅子」も見たことが有ります。

さて、多くのメダルを見ていて、私は『複製品(付け替え品)を見抜けるようになりたい!』と思いました。
そこで、手元にある現物、雑誌に掲載されている写真、インターネット上の画像をよくよく見てみたところ、初代グランドセイコー、ライナークロノメーターのものを除いて、獅子の造型には2種類が存在することに気付きました。

グランドセイコーセルフデーター、57GSカレンダー、44キングセイコークロノメーター、セイコーマチッククロノメーターは、全て2種類の何れかの獅子が付いていました。

仮に、2種類をそれぞれタイプA、タイプBとします。

タ イ プ A
タ イ プ B
「SEIKO」文字に重量感あり。
獅子も、重量感あり。
★も、重量感あり。
「SEIKO」文字がスッキリ。
獅子も、全体的にやや細め。
★も、スッキリ。

見分けるポイントは?

特徴的な「左前足」
大きく曲げていて太め
直線的で細め
星の位置関係
左側が広い
右側が広い

2種類存在することと、その特徴は確認出来たのですが、何故2種類存在するのでしょうか?


仮説:

仮説1 2種類は、ある時期を境にデザイン(金型)が変更され、前期、後期型が存在する。
(この場合、裏蓋シリアルNo(製造年月)で並べると、ある時期を境にその前後にきれいに別れるハズ。)
仮説2 2種類は並行して製造され、製造工場(外装製作の下請け会社)の違いから2種類存在する。
(この場合、裏蓋シリアルNO(製造年月)で並べても、タイプA、Bはバラバラに混在するハズ。)

仮説に基づき、調査を続行しました。
そして調査サンプル数は243個に上りました(2007年7月1日現在)。

* * * * *

調査結果:

別表(裏蓋シリアルNo.による調査結果)の通り、仮説1(前期/後期)が証明されました。
タイプAは1966年2月を最終ロットとし、1966年3月からタイプBに切り替わっています。
グランドセイコーセルフデーター、44キングセイコークロノメーター、57GSカレンダー、セイコーマチッククロノメーター全ての機種で、この法則が成り立ちます。

 更に、1967年1月以降は「GSメダル」となっています。(1967年1月は、未確認)2004.8.8訂正
但し、44グランドセイコーは例外で、1966年12月11月の「GSメダル」が存在します。2006.10.9訂正

また、獅子メダルの調査により、各モデルの製造時期がおぼろげながら見えて来ました。

機種名
ケースNo.(材質)
最古個体
最新個体
グランドセイコーセルフデーター 43999(SS)
1963年4月
1965年4月
57グランドセイコーカレンダー 5722−9990(SS)
1965年4月
1966年12月
5722−9010(GC)
1966年8月
1966年9月
5722−9991(SS)
1967年1月
1968年7月
5722−9011(GC)
1967年5月
1968年2月
キングセイコークロノメーター 49999(SS)
1963年12月
1965年1月
4420−9990(SS)
1965年1月
1966年11月
4420−9990(GC)
1966年2月
1966年12月
セイコーマチッククロノメーター 6245−9000(SS)
1965年10月
1966年4月
6245−9000(GC)
1966年5月
1966年5月
6246−9000(SS)
1965年7月
1966年3月
6246−9000(GC)
1966年5月
1966年5月
62グランドセイコー 6245−9000(SS)
1966年9月
1966年12月
6245−9000(GC)
1966年10月
1966年10月
6245−9001(SS)
1967年3月
1968年7月
6246−9001(GC)
未 確 認
6246−9001(SS)
1967年1月
1967年7月
6246−9001(GC)
1967年4月
1967年6月
44グランドセイコー 4420−9000(SS、GC)
1966年11月
1968年2月

(注)製造年月は、ケース裏蓋シリアルNoからの推測に過ぎない。
「裏蓋」、「文字板」叉は「ケース自体」が後年
交換されている個体もあると思われるため。

* * * * *

 以上のことから、断言は出来ませんが、例えば裏蓋シリアルが1965年でタイプBの獅子が付いているものは付け替えでは無いか?というひとつの判断材料にはなり得るでしょう。(断言はできませんよ!(^_^;))

 一方、裏蓋シリアルが1966年3月以降でタイプAの獅子が付いているものは、これもアヤシイ。付け替えでは無いか?というひとつの判断材料にはなり得るでしょう。(これも、断言はできませんから!!(^_^;))

 更には、1967年2月以降で獅子メダルが付いているものは、本来ならば「GSメダル」ではないのか?という判断材料にはなり得るでしょう。(しつこいですが、断言はできませんので!!!(^_^;))

 以上は私個人の個体検証結果による独自の見解であり、文献、資料による客観的事実ではありません。
くれぐれも、ヤフオクのQ&Aコーナーやアンティークショップの店頭などでの突っ込んだ質問などのネタになさいませんように、お願い申し上げます。


さらに、新事実が発覚!獅子の進化の過程に迫る!!

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