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「ヤフオク」が未だ無かった頃(後編)

Original:04.5.15
Last Update:04.5.15
Japanese text only


(前編)からの続きです。

個人売買情報誌「QUANTO」も、号数を重ねる毎に
その厚さが目に見えて厚くなり、誌面も充実して来ました。

QUANT誌の掲載情報件数の推移
年 月
件数
1994年
 4月(創刊号)
636
 5月
1,093
 6月
1,653
 7月
2,263
 8月
3,041
 9月
2,964
10月
5,500
11月
5,700
12月
5,805
1995年
 1月
8,300
創刊から1年未満で、件数は10倍超!。
1995年9月から隔週刊化。

 編集サイドでも掲載分類(カテゴリ)の見直しや、無料掲載用紙のコピー使用禁止、2重投稿を避けるためのFAX受付の廃止など改善が図られて行きました。

私自身も、購入/販売で頻繁に利用させてもらい、コレクションの充実に役立ちました。
誌上での「顔なじみ」の方も増え、未だ情報が少なかった国産腕時計の情報交換や、取り引きとは別に厚意で昔の資料をコピーして送って下さる方もいらっしゃいました。

第一回「ノスタルジックマーケット」が大阪で開催されるということも、関西の「顔なじみ」の方から教えていただき、オフ会を兼ねて大阪まで出かけたりしました。

* * * * *

 さて、すっかり個人売買によるヴィンテージ腕時計の売買が定着してきて、誌上でも、個人売買の注意、心得などの啓蒙活動が行われていたにも関わらず、詐欺、または詐欺に準ずる行為が起こっているという報告も有っていました。

そんな中で、私もその当事者になってしまった例を御紹介します。

ケースその1:本人の母でございます。

当時はコレクションを始めて間もなく、国産腕時計の面白さにハマッってしまい、独身だったことも手伝って次から次へと購入していました。
しかし、いわゆる「アンティークウォッチショップ」で購入すると商品は間違いないもので、保証も付きますが、それなりの値段になります。
個人売買は手軽に安く購入でき、思わぬものが出て来るところが魅力でした。
そして、私自身に個人売買への慣れから来る「気の弛み」「慎重さを欠く」という傾向に有ったのかも知れません。
こんな「おいしそうな」ハナシが載っていました。
当然、速攻で先方にハガキを出しました。

 数日後、本人から直接電話連絡が有りました。
「5641は、文字板に日付表示が無いモデル。」「何れも新品未使用品。」ということを確認し、「6146を希望する。」と伝えたことを覚えています。
そして、その彼から「現金書留で送金して下さい。折り返し、品物を送りますから。」と言われ、なんの疑いも無く、3万円を現金書留にて送金したのです。

1ヶ月ほど過ぎ、「61GS、送って来ないな〜。」などとのんきな事を考えていた頃...。
突然、警察から電話があり!!

 警察:「東京の亀有署のものですが、Kさんですね。○○って男、知ってますよね。」
 私 :『はい、知ってますが...。』
 警察:「詐欺の容疑で逮捕したから。貴方も含めて被害者が沢山出てるんだ。今、彼の部屋から出た手紙やらメモから被害者の人達に確認してるところだから。」
 私 :『逮捕?...(゚д゚)ハア?...。』
 警察:「また、連絡しますから。」

 その後、警察からの連絡は無く、そのまた約1ヶ月後、「本人の母」と名乗る人物から現金書留で3万円が返還されて来ました。
 手紙が同封されており、その文面は下記のようなものでした。

『拝啓  この度は、息子がとんでもない御迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございません。
息子は精神を病んでおり、入退院を繰り返している状況です。
この度のことは本人も深く反省しております。
ニ度とこのようなことがないよう、親として責任を持って...(以下省略)』

おや?この文面はどこかで見たことがありませんか?。
インターネットの巨大掲示板群「2ちゃんねる」をご覧になったことがある方は、もうお分かりでしょう!。
いわゆる「クソスレ」(糞スレッド)を立てた人に対する書き込みの有名なフレーズのひとつですね。
もちろん、1994年当時は未だインターネットは普及しておらず、「2ちゃんねる」なども有りませんでしたが...。
今、思えば「本人の母」というのも怪しく、実は「本人(自作自演)」ではなかったのか?とも思いますが、実際はどうだったのでしょう。
詐欺とは言え、被害金額が帰って来たのも珍しいケースだったのかも知れません。

ケースその2:『ファストGS』当選!。

そしてまた、数カ月後の誌面に怪しい「売ります」の情報が...

そ の 1
そ の 2
そ の 3
「これでもか」というくらい美味しいところを出して来ていますね。
その1とその2は住所、氏名は違いますが、どうも同一人物らしい匂いがします。

 今回は私も最初から様子見、というか「冷やかし」で「ファーストGS4.5万を希望。」でハガキを出してみました。
すると数日後、怪しい封書が送られて来ました。

出品者から送られて来た封筒
(あまりにも怪しいワープロで打った宛先。裏の差出人も同様にワープロ打ち)
同封されていた手紙2枚と同封されていた『ファストGS当選』の紙
拝啓

お手紙拝見いたしました。
当方、急な移転のため連絡が遅れてしまい誠に申し訳ありません。

抽選の結果貴方様にお譲りすることにいたしますので、同封のコピーをよく
ごらんのうえ、納得いただけましたら、以下の方法により、ご送金下さい、

1・郵便為替(宛先は、無記名で)
2・切手代用(500円以上の額面で)
3・商品券(デパート・スーパー等)
当方自営で水道関係の商売をしておりますので、振り込みや現金書留、代引
き便の送付なども、税務署が結構うるさいので、ご勘弁願います。決定権は、
あなたにありますので、一応1週間、当方は待ちます。それまでに、ご入金
無き場合には、次の方にお譲りいたします。入金頂いた方には、詳細を、連
絡した後に現物を郵送致します。何卒よろしくお願いい申し上げます。

敬具

追伸
住所が変更になりました。
郵便は、封筒に記入された住所でお願いします。今後は、プライバシーを守
るため、必ず封書での連絡をお願いします。
*送料は無量です。全品6か月の保証を付けます。
無論返品も可能です。

送金は、書留、簡易書留、速達などを利用してください。

なにせ凄い反響でしたので、入手後1ヶ月位は、内密にしておいてください。

各複数(1部は単数)用意していましたので混乱は無いように思っていましたが、現在も
問い合わせが、殺到しています。中には、脅迫めいた事を書いてくる人もおり、保身のた
め宜しくお願いいいたします。

 ベルトは、オリジナルをお付けしますが、皮パンド等1部実用に耐えないものは、代替
えも同梱しておきます、箱はほとんど付いていますが、中に2〜3点疑問があるのもあ
ります。それはご了承ください。


では宜しくお願いします。よい返事をお待ちしています。






 〒110
 台東区●○
 ××ビル4F−○○○号
   S K
『ファストGS』当選!!

皆様もう、お分かりですね。どう考えてもおかしいですね。
明らかに複数の人に同一の文面を送っていると思われます。
他の人は「サンアンドムーン当選」だったり「シチズンクロノメーター当選」など使い分けていたかも知れませんが...。

「プライバシーを守るために封書での連絡を」という表現は、その2、その3と共通しています。
また「連絡先の住所変更」「現金書留、振込はダメ」「連絡は封書で」「入手後1ヶ月ぐらいは内密に」...。
全てが怪しいことだらけです。

当然ながら、私は半ば呆れてしまって、連絡も送金もしませんでした。先方からも、何の連絡も有りませんでした。
知り合いの業者さんから「あれは詐欺ですよ、気を付けて下さいね。」との連絡がありました。


 これには後日談があり、やはり送金した人がいらっしゃったようです。
数カ月後...クアント誌の「WANTED」コーナーに下記のようなメッセージが掲載されていました。

「S K」この詐欺師野郎!金返せ!
すぐに連絡しろ。警察に訴えるぞ!!。

この話しは、ノンフィクション(実話)です。

* * * * *

インターネットの普及により、本当に便利な時代になったものです。
現在では、銀行の口座振込も「インターネットバンキング」から、郵便局も「郵貯インターネットホームサービス」で自宅や、勤務先のパソコンから簡単に出来てしまいます。

ヤフオクも数年前は詐欺や、盗品の売却に利用されたり、問題はあったようですが、サービス利用料の徴集(有料化)、本人確認の厳格化で明らかにアヤシイ人は減ったようですし、システムも改善されているようです。

取り引きの形態、連絡手段は変化し、進歩したものの、「個人売買」という点での基本は同じだと思います。
「評価システム」、「Q&A」、「電子メールによる確認」などを活用し、取り引きは慎重に、そして「ヤフオク」を楽しみましょう!!。

最後は宣伝みたいになってしまいましたが、個人的には入札の「自動延長システム」で思わぬ高額落札となってしまうのが困ったものですよね。
(これは、システムの問題ではなく、入札者自身の問題ですが...(^_^;))

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