Original:04.5.3
Last Update:04.5.3
Japanese text only
ヤフーオークション:商品詳細画面の例
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画面は合成です。(C)YAHOO!JAPAN
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平成15年(2003年)末におけるインターネットの利用者数は、対前年比788万人増の7,730万人。
人口普及率は、対前年比6.1ポイント増の60.6%に達し、世帯(自宅)におけるブロードバンド回線利用者の割合は47.8%(同18.2ポイント増)となっています。
また、個人におけるインターネットの利用内容は、1位が「電子メール(57.6%)」、2位「情報検索(57.4%)」、3位「ニュース等の情報入手(48.7%)」と続き、「オークション」は13位(13.0%)となっています。
(2004年4月14日付、総務省発表資料「平成15年通信利用動向調査の結果」より引用)
私も国産腕時計「セイコーマチック」を購入する主要な手段としての「ヤフオク」利用は4年前からすっかり定着し、毎日しっかり出品物をチェックしております。
また、時計の購入資金の調達方法として、不要なもの(ビデオテープや電気製品)の売却にもしばしば利用しています。
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さて、ヤフオクもインターネットさえも普及していなかった頃(1990年代前半)「パソコン通信」は有りましたが、利用者は一部の「オタッキー(死語)な人々」に限られていました。
当時は、どのようにしてアンティーク(ヴィンテージ)腕時計を購入していたのでしょうか?
私の場合は、下記のようなところで購入していました。
1.いわゆる「アンティークウォッチショップ」といわれている専門店。
2.地元の神社で開催される骨董市。
3.地元の古道具屋、骨董品店、リサイクルショップ。
4.地元の質屋、時計店。
1のショップは、東京、大阪、神戸などに出張、旅行に行ったついでによく廻りました。
10年前は未だ面白いものが見つかったりして、当時は独身だったことも手伝って、今思えば高価な物を次から次に購入していました。そうして、現在も親しくおつきあいいただいている業者さんとも知り合うことが出来ました。
2の骨董市は、今でも毎月開催されており、足繁く通っていますが、最近はめぼしいモノは本当に有りません。
3、4は、10年前は未だ面白いものが見つかったりしましたが、時計屋さんは関東の業者さんに根こそぎ持って行かれた後で、警戒心が強い店が多く『古い腕時計を集めているのですが、何かありませんか?』と尋ねて行っても、あまり良い顔はされませんでした。
また、雑誌に国産腕時計が取り上げられるようになった1990年代中頃からは、店主から本を見せられて「ほら、ここに載っとるのと同じモノやろ。10万円以上払ってもらわんと売られんね。」と逆に吹っかけられるようになってしまいました。
そんな頃、画期的な「個人売買情報誌」が創刊されました。
個人売買情報誌「QUANTO」創刊号
(1994年4月) |
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創刊当初の掲載内容は、車、バイクなどがメインだったのですが、次第に「コレクターズアイテム」「腕時計」も多く掲載されるようになって来ました。
ちょうど私も当時の腕時計コレクションの方向性が「マチック」に照準を合わせた頃で、手元に持っていたスウォッチやセイコー以外の腕時計は全部「売り」に出しました。
クアント誌上での売買の流れは、下記のようなものでした。
売 り 手
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買 い 手
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掲載を依頼する
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巻末に付いている「掲載希望用紙」に記入し、編集部へ郵送、またはFAX送信。 掲載可能な文字数には制限があり、写真なしは無料掲載。 写真掲載は有料(500円)だった。 |
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誌上に掲載される
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代表的な掲載パターン
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掲載情報を見る。 限られた文字数と小さな写真から、想像力を駆使して可能な限りの情報を読み取る。 |
交渉/商談
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買い手からの連絡を受け、交渉に入る。 必要があれば「写真」、「売り物リスト」を買い手に郵送する。 |
売り手に「往復ハガキ」で購入希望を伝え、自分の連絡先、購入条件などを伝える。 売り手が電話受け付けOKの場合は、直接電話交渉する。 実際は電話はダメという人が多かった。 電話OKの人も受け付け時間帯指定で、時間厳守だった。 |
取り引き開始
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「代金引き換え郵便」の場合、商品代金が「為替」で郵送されて来るので、郵便局で換金。 | 売り手に「銀行振込」または「現金書留」で送金。 または、「代金引換え郵便」で商品を郵送してもらう。 「代引」の場合、郵便配達員に商品代金を支払う。 クアント誌は「代引」を推奨していたが、受け取って開けてみたら「違う商品が入っていた」、最悪の場合「何も入っていなかった」などのトラブルが結構あったようだ。 現金書留は故意にでは無くても、金額を少なく(入れ忘れて)送って、例えば2万円の取り引きで、出品者は「1万円しか入っていなかった」と主張。購入者は「間違い無く2万円送った」と主張。郵便局は「一切関知せず」というトラブルもあったようだ。 |
取り引き完了
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個人売買の取り引きでは、こんなこともありました。
その1.どんな腕時計ですか? 電話ではよくワカリマセン。
個人売買では電話で出品者と交渉することが多く、時計の外観、状態、文字盤の特徴など、自分の求めている物かを慎重に確認することが必要でした。
現在の電子メールでは、容易に画像を添付して送信することが出来ますが、当時はデジカメさえ普及していませんでしたので、必要があれば売り手にお願いして「写真」を郵送してもらって確認していました。
このように掲載されていました。
今ではマチックの33石であれば、マチックウィークデーター:400か、51MATIC−P:5106だろう、と見当も付くのですが、当時の私は「セイコーマチックグループ」の全貌も良く把握していませんでしたので、まずは売り手の人に電話で聞いてみました。私 :『セイコーマチックの33石ということですが、それは文字盤の6時のところに曜日の表示があるものでしょうか?』
売り手:「あ〜、そうそう。そうですよ。」
私 :『文字盤はどんなデザインなんでしょうか? 何か特徴がありますか?』
売り手:「そうやね、競技場みたいになってまんねん。」
私 :『?(゚д゚)ハア?...。競 技 場 ですか???』
売り手:「そや。 周りがね、陸上競技場みたいやねん。」
私 :『??そっ、それは、ラインが引いてあるってことでしょうか?』
売り手:「ちゃうちゃう。 角度が付いとってやね、傾いてんねん!。」
私 :『??(ようワカランけど、なんか凄い文字盤みたいやな〜。マチックでそんなのあったかいな。相当珍しいごたる。)
是非、譲って下さい!。お願いします。』
売り手:「よろしいで、じゃあ○○に振り込んで下さい。私もすぐに送りますよって。どうぞ、よろしゅう。」
私 :『ありがとうございます。ヤッター!!(心の叫び)。』そして数日後、送られて来たマチックは!?
確かに今、冷静に振り返ってみると、
それは文字盤外周の秒目盛り部分
「ダイヤルリング」のことであった。
しかし、陸上競技場とは。
良く言ったものです。その2.一般の人から見れば、古い腕時計は皆同じに見える?
個人売買での取り引きにも慣れて来て、売り手との交渉テクニックとしては「他にセイコーの自動巻をお持ちでは有りませんか?」と、必ず聞いてみることにしていました。
今の「ヤフオク」で言うところの「出品者のその他のオークション」を見てみる、といったところですね。
また、1994年6月頃に「国産時計博物館」が発売されると、「国産時計博物館に載っているのと同じ」、「国博PXXに掲載品と同型」という表現が交渉の会話やクアント誌上で増えました。
当時私は「セイコーマチッククロノメーター(6245:35石)」を探し求めていましたので、ある人から普通のマチックウィークデーター(6218:35石)を譲ってもらい、その人に電話で連絡した際に聞いてみました。
私 :『セイコーマチックで文字盤にクロノメーター、35石と表示されているモデルを探しているんですが。』
その人:「あ〜、それ確か持ってるよ。」
私 :『えっ!。それは国産時計博物館の99ページに載っているものと同じものですか!?』
その人:「あ〜、確か同じ。ちょっと待ってね、見てみるから.....。うん、ステンレスのだけど、同じだね。」
私 :『えっ〜!。文字盤に「35JEWELS」の表記はありますか?』
その人:「うん。ディアショック35って書いてありますよ。」
私 :『是非譲っていただきたいのですが、私のクラウンスペシャルと交換していただけませんか?』
その人:「ほ〜。クラウンスペシャル持ってるの?。探してたんだよね。綺麗なの?」
私 :『金張りケースで、文字盤もシミがなくて綺麗です!。是非、お願いします。』
(確かに今、冷静に振り返ってみても、この時のクラウンSPは、かなりの美品であった。)
その人:「いいですよ、じゃあトレードということで、私もすぐに送りますから、送って下さい。」
私 :『ありがとうございます。ヤッター!!(心の叫び)。』
今では皆様御存知の、セイコーマチッククロノメーター 手巻の高級機クラウンスペシャルそして数日後、送られて来たマチックは!?
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確かに文字板には「35JEWELS」の表示がありますが...。
やっぱり同じに見えるのかなぁ〜。 この時計は『思い出のマチック』として 今も大切に所有しています。 |
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このように、10年前の個人売買における取り引きは、当たりハズレが極端でした。
そこがまた、面白いところでもありましたが。
手紙、電話でのやり取りも、なんかのんびりとしていて、今のヤフオクのように「落札後、24時間以内に連絡が取れない方はキャンセルとさせていただきます。」などというせっかちな人には耐えられない世界だったかも知れません。
また当時、個人売買でお取り引きさせて頂いた方と「ヤフオクで再会」というケースも結構有りました。
この頃に入手した時計は、当時の売り手とのやり取りなどを含めて、結構状況を覚えています。
一方、ヤフオクで購入した時計は、いつ、誰から購入したかという印象が薄いように感じられます。
これもデジタル社会の特徴(匿名性)ということなのでしょう。
(後編)に続きます。