セイコーマチックについて
About Seikomatic

Original:2004/01/01
Last Update:2010/06/06
Japanese text only


1.セイコーマチックとは

1959年に発売された「ジャイロマーベル」に続く高級自動巻き腕時計です。

セイコーの数ある自動巻腕時計の中で私が特に魅力を感じ、蒐集している機種は「セイコーマチック」です。

セイコーの自動巻き腕時計の多くは「何々マチック」というペットネームが付けられていますが、その中でも始祖と言えるものです。

1960年の製造開始から1967年頃までの機械式腕時計の最盛期に、セイコーの男性用自動巻腕時計の主力製品として多くの製品が展開された機種です。

最高級品の「クロノメーター」から、あのグランドセイコー初の自動巻モデルにまで昇華していった機種。それが「マチック62系」と呼ばれる製品群です。

2.特徴

(1).スマートな薄型自動巻

薄型自動巻のために新たに設計されたムーブメントを使用し、普通の腕時計と大差のない厚みを持ち、且つ極めて薄く見えるようにデザインされた薄型自動巻です。

 ジャイロマーベルがその名の通り、手巻きの「マーベル」に自動巻き機構を付加した(実際の機械は、マーベルの弟にあたる「ローレル」のようです。)のに対して、セイコーマチックは薄型普及機の「ライナー(3140)」をベースにしています。
 時計の部品を作る際には「ジグ」と呼ばれる工作機械の「型紙」のようなものが大量に必要になり、これを新規に専用のものを作ろうとすると、どうしても金型製造にコストが掛かってしまいます。
このため、既存の手巻き機械の部品を流用することで、製造コストの節約と、安定した部品の供給、製造精度の確保が出来るわけです。

 反面、手巻きの機械に自動巻き機構を上乗せするわけですから、どうしても厚みが出てしまいます。
ジャイロマーベルの場合、そのコロンとしたケース形状がまた可愛いのですが!(^-^) )

そこで、マチックは当時セイコーで二番目に薄型(3.35mm)のライナーを輪列に採用しています。
 ライナーには後に「ライナークロノメーター」という製品も有り、精度が出せる機械でした。
ジャイロマーベル (1959年〜)

 何故、1番薄い機械「ゴルドフェーザー」(2.95mm)を輪列に採用しなかったのか?
結論から申しますと、同じセイコーグループながら、製造会社(工場)が違うため、採用できませんでした。(^_^;)

1960年代のセイコー社は、東京都亀戸の「第二精工舎亀戸工場」と長野県上諏訪の「諏訪精工舎」の2工場に主力生産ラインが分かれていました。
「諏訪精工舎」は、1959(昭和34)年に「第二精工舎諏訪工場」と「大和工業」とが合併し設立されたものです。
「マーベル」−「マチック」系列は諏訪精工舎の製造で「ゴールドフェーザー」は「ユニーク」−「クロノス」系列の第二精工舎亀戸工場の製造でした。
男性用製品は「諏訪」、女性用は「亀戸」という暗黙的な住み分けもあったようです。
近代の「OEM(相手先ブランド供給)」などという考え方も無かったのでしょうし、逆に諏訪と亀戸とはグループ会社ながら、ある種の対抗意識のようなものがあったようです。
セイコーOBの方でも「そういった意識はなかった」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、本間誠二氏のように「あった」とおっしゃる方もいらっしゃる様です。
1964年にセイコーグループが一本化された後、諏訪の製品であった「グランドセイコー」も1966年の44グランドセイコーから亀戸製の機械(4420B)を搭載し、同じく諏訪のセイコーマチックも1967年のセイコーマチック−Pが初の亀戸製の機械(5106A)の製品が登場し、暗黙的な住み分けも、諏訪VS亀戸の対抗意識も無くなったようです。

さて、実際のところ「ゴールドフェーザー」は当時の国産手巻き式腕時計で1番薄い究極の薄型機を目指して開発されたため、輪列の配置も従来の手巻き機械とは異なる、言わば「専用機」であり「異端児」なのでした。

【マチック20石(左)とライナー23石(右)】
 セイコーマチックは当時の資料に「全く新しく開発しました」と書いてありますが、その輪列の配置は、マーベルの薄型進化型と言えるオーソドックスなものです。

設計コンセプトは、耐久性、精度を重視した自動巻き、手巻きの両方に使用できる薄型の機械を開発し、自動巻きはマチック、手巻きはライナーとして世に出されたものと言えるでしょう。

 実際はマチックが1ヶ月先行して発売されていますので、マチックの手巻きバージョンがライナーであると言えます。
両機は文字板のデザインにも共通点が見られます。
 最初に20石、普及目的で価格を押さえた17石が発売され、高級品のニーズに対応した格好で30石が後に発売されたようです。

17、20石は、高級感のあるロジュームメッキ、30石は金メッキが施されています。

(キャリバー一覧には「21石」も記載されていますが、実物はもちろん、文字板、ガラ機械さえ未確認です。)
2004年2月17日:更新
未確認の21石を親切な知人から入手することが出来ました!。→こちらで、公開中です。

(2).リューズによるゼンマイ巻機構がないこと

自動巻機構に対する高度の信頼性からリュウズによるゼンマイ巻は不要となりました。リュウズは時合わせにのみ使われるのでケースの中に埋められました。また、その位置を4時方向としたため美しい外観が得られ、袖などに触れることはありません。

(3).超小型ボールベアリングの使用

ボールベアリングにより回転がきわめてスムーズで腕のわずかな動きでもゼンマイが巻かれます。磨耗が少なく、また良質な材料を使用しているので、寿命は半永久的です。堅牢で重い回転錐の衝撃に対しても充分の強度を保持しています。

30石の自動巻き機構のボールベアリングには、「国産初のスーパーポリッシュ仕上げ」のルビーボール6個が使用されています。

「磨耗などは考えられません」と書いてありますが、時々ルビーボールが割れて(欠けて)いる個体を見かけることが有ります。
時計本体の落下などの強い衝撃で割れてしまったのではないかと思います。

(4).マジックレバー使用による単純な機構

マジックレバーを使用して高度に単純化された独特なトルク伝達機構により少ない部品で充分な機能を果たしております。単純な機構のため従来の自動巻に比べて比較的低い価格で提供できるわけです。

マジックレバーの3つの役目

回転錐がどの方向に動いても伝エ車を常に一方向にだけ回しています。 回転錐の左右の回転に対して切換機構を必要としません。
回転錐の回転によって生ずるトルク(回転力)を拡大して伝エ車に伝えます。 回転錐によって生ずるトルク(回転力)の10倍以上の力が伝エ車に伝えられます。
ゼンマイの力で伝エ車が逆転するのを止めています。 逆転止めのための爪などを別につける必要がありません。

したがって部品の数を非常に少なくできます。
1つの部品でこれだけの特長が生まれて来ているところから「マジックレバー」の名前がつけられています。

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