セイコーマチックウィークデーター、セイコービジネス
Seikomatic Weekdater
400、6206

Original:2004/02/15
Last Update:2014/09/07
Japanese text only


製品名:セイコーマチックウィークデーター

キャリバーNo:400(33石)

略称:MAW

販売開始(セイコー社資料より):1963年8

最古確認個体:1963年7月

最新確認個体:1965年2月

製品名:セイコーマチックウィークデーター
セイコービジネス)

キャリバーNo:6206A、B(26石)

略称:MAW、(62B)

販売開始(セイコー社資料より):1964年8

最古確認個体:1964年5月

最新確認個体:1967年2月

1.特徴

(1)400(33石)

セイコーマチックセルフデーター(394)に曜日表示を付加し、9石(日車:7石、曜車:2石)を追加した機種です。

当時の技術解説(セイコーニュース1963年10月号)より
この時計は、高級紳士用腕時計として既に定評のあるセイコーマチックセルフデーターを基礎ムーブメントとし、それに新しく曜日付カレンダー機構を加えました。しかも、ケースは30mの水圧に耐える防水となっておりますから大変便利な時計といえます。
又、この時計の大きな特徴である曜日付カレンダー機構も大きな曜窓やセイコー独特の便利な修正装置等の魅力をそなえています。

セルフデーター(395)の特徴を継承
 ・機械が金メッキの金キカイとなっている(ただし、機械シルアルNo、秒針規正装置は付加されていない)。
 ・文字板12時下のコママークが植字仕上げとなっている。

 セイコーの自動巻で、最初に日付曜日表示機構を搭載した機種は「スポーツマチック5(410)1963年5月製造開始」である。
 (セイコーマチックウィークデーター400は、スポーツマチック410に少し遅れて1963年8月発売。しかし、キャリバーNoは400の方が若いので、先に製品開発に着手された可能性あり。)

 ウィークデーター400は意外に製造期間が短かかったようで、某有名国産腕時計の書籍には「1964年頃に製造終了」との記述が有るが、裏蓋シリアルNoから、1965年2月製造を確認しているため、実際は約1年半程度だったと思われる。

 ウィークデーターの主力製品は、1964年8月発売の6206(26石)と、同9月発売の6218(35石)に継承され、自動巻腕時計の主力製品として1967年頃まで製造されました。

(2)6206(26石)

400(33石)を改良、更にコストダウンし、自動巻日付曜日機構付き腕時計の普及を図った機種です。

結果的に62系ウィークデーターの製品構成は、6206(26石)と6218(35石)の2種類となったわけですが、その理由は個人的には「価格設定」と「防水ケース」の問題と推測している。
・価格設定:更に低価格のウィークデーター製品を市場から求められていた→6206(26石)
 一方、高級機には値段は高くても秒針規正装置付き、高級防水ケースの多石機種が望ましい→6218(35石)
・防水ケース:高級防水(50メートル)の規格に適合させるためには400の外装設計、機械実装方法を変更する必要があったのでは?

当時の技術解説(セイコーニュース1964年7月号)より
御好評いただきました高級紳士用腕時計、セイコーマチックセルフデーターを母体とし、さらに改良を加えたもので、精度はきわめて安定したものになっています。
セイコーマチックセルフデーターの機械を用いて比較的磨耗しやすい香箱の回転部分の寸度に充分な余裕を与えたので、耐磨耗性がぐんと増えました。またそれに従い、角穴車の断面形状を変えたのでレバー案内が不要になりました。

改良点
 ・上記「香箱真の受け部分を厚くした」ことで耐磨耗性の向上。
 ・文字板受けリング(下記、「3.機械」−「(4)文字板受けリングについて」参照)を採用したことで、文字板取り付け時の変型を防止。
コストダウン
 ・上記「角穴車の断面形状変更」による部品数の減少。
 ・文字板12時下のコママークをプリントに変更。
 ・曜窓の枠が初期の製品では省略されている。 

2.外装

(1)ケース

400は、SS:J13080、SGP/裏蓋SS:408980の一種類のみを確認。
SSケースは、裏蓋スナップ式。SGPケースは、裏蓋が8角形スクリューバック式。
共に裏蓋に「イルカマーク」がある。

6206は、外装(文字板、ケース)デザインのバリエーション展開が行われ、多種多様なデザインを見ることができる。
初期製品(SS:#8980、SGP/裏蓋SS:#8990)は、裏蓋スナップ式。#8010以降は、裏蓋スクリューバック式。
裏蓋に「イルカマーク」があるが、1966年末〜1967年頃の製品は「SEIKO」に移行。

(2)文字板

400は、白文字板のみ。金色、銀色共にADのみ存在。SDは、未確認。12時下のコママークが植字仕様のみを確認。
バーインデックス形状から、前期、後期型の2種類のみを確認。(SGPケースの前期型文字板は、未確認。)

400の文字板バリエーション(6206初期型との比較)

400前期SS
(MAWJ13H333AD)
400後期SS
(40 898 T0)
6206−8990SS
(6206−8990R)

12時のインデックスが長い
ダイヤルリング(秒目盛り)の
12時位置が他より太い。
植字マークあり。

インデックスの長さが全て同一
ダイヤルリングの目盛りも同一
植字マークあり。
 

コママークが黒色プリント、
曜日窓枠が無い。
植字マークなし。
 

30:水色

30:黒色

30:黒色

 
SGP
(40 898 T0)
6206−8990SGP
(6206−8990T)
400前期型SGP未確認
 

6206は、12時下、9時右のコママークはプリントのみを確認。黒文字板もある。

(3)日、曜車(日付、曜日表示)

日付窓の大きさ、および日付字体は1種類のみ。
曜日はフルスペルで「MONDAY」の様に表示。和文字表示「月曜日」もある。

6206には、曜日窓が9時位置の文字板デザインもあり、初期製品は、曜窓の枠が省略されている。

(4)風防のレンズ有無

デッドストックの個体に「レンズなし」のものを確認。
当時の「セイコーニュース」の写真も「レンズなし」となっている。

3.機械

(1)キャリバーNo.の番号体系について

 394→395→400と、順当にナンバリングされてきたキャリバーNoですが、次の製品では突然6206になります。
 何故400から6206に飛んだのか?
これは、1963(昭和38)年〜1964(昭和39)年当時、キャリバーNo、外装部品番号体系の整備が実施され、キャリバーNoが4桁に統一されたことによります。

ペットネーム
旧キャリバーNo
新キャリバーNo
セイコーマチック
603
6201
マチックセルフデーター
394
6205
マチックセルフデーター規正付
395
6219
グランドセイコーセルフデーター
430
5722
キングセイコー
44A
4400
クラウン
560、57A
5700
マチックスリムデート
840
8305B

面白いことに、当時の国鉄(現:JR)も1959年6月に新性能電車の車両形式番号体系の変更(2桁→3桁)を実施しています。
 (例:特急こだま型電車:クハ26→クハ151)

(2)基礎輪列

400、6206共に金メッキが施され、個体番号の刻印は無し。
香箱受けと2番受けが1体パーツのみ確認。
400(33石)→6206(26石)で、減少した7石は、日車(日付表示盤)下の7石。

ウィークデーター400:33石(日車下に7石)

日車については、1日1回の日付が変わる瞬間にのみ機能する部分に石を追加しても、精度の向上には寄与しませんので、当時の多石化競争の影響のようです。
2004年3月7日追記
日付曜日ディスクを切り替える時間帯(22:30〜25:00)は、動作負荷が掛かりテンプの「振り落ち」と言われる状態となります。
そのため、400の日車下の7個、曜日車下の2個の石は「振り落ち」を減少させるための効果が少なからずあったと思われ、単純に「多石化競争の産物」とは言えないようです。

(3)自動巻機構

回転錘(ローター)に衝撃吸収切り込み有のみ確認。
ローターの刻印が400は「SEIKOSHA」、6206から「SEIKO」となっている。

機械外観
CAL:400

SEIKOMATIC 33 JEWELS
回転錘(ローター)を外した状態

CAL:6206A

SEIKO
26JEWELS
回転錘(ローター)を外した状態

(4)文字板受リングについて

日付け/曜日付き腕時計(ウィークデーター)の場合、機械本体と文字板の間を日車(カレンダーディスク)、曜車が回転するため、間隔(クリアランス)を保持しておく必要が有る。
この機械本体と文字板の間隔が平行に保たれないと日送り/曜送り不良の原因となる。

Cal:400(機械側面画像)
Cal:6206A(機械側面画像)
文字板と機械体の間隔保持を「文字板受け」で行っている。
機械本体と文字板の間を日車(カレンダーディスク)が回転する。
文字板受けは3箇所しか無いため、面を点で受ける格好となり、
文字板取り付けの際に押し込み過ぎたため、文字板または干支足
が変型している個体が見受けられる。
文字板の面を機械体の全周で受ける「文字板受リング」を採用。
「文字板受リング」は初期製品は止めネジを使用する金属製。
後にコストダウンのために、止めネジを使用しない合成樹脂製に変更。
(SEIKOウォッチ技術解説:1965年5月より)
機械体も400に比較して厚くなっている。

(5)6206Aと6206Bの相違点について(2007/1/5:追記)

6206Bは、日車、曜日車を切り替える「日曜送車」の形状が変更になっており、6206Aよりも日付曜日切り替えに要する時間帯が約30分短縮されている。(6218Aと6218B、Cの関係と同様)
また、A→Bへの変更とは別途、文字板受リングの材質変更も実施されている。→詳細ページを別ウィンドウで開く

4.「Fタイプ」、「ビジネス」について

セイコーマチック・ウィークデーター(6206)には1965年度製品から「Fタイプ」と銘打った製品が登場します。
当時のカタログを見ると、単にゴツいモデルが「Fタイプ」というわけでは無く、ベゼルにギザギザや凝った模様が入っているものが「Fタイプ」となっています。

SEIKOのあゆみ
(1966年1月 服部時計店)より

Fタイプの「F」の意味は不明です。
「ファッショナブル」なんでしょうか??

Fタイプの「F」意味が判明しました!!。(2005年4月20日:加筆訂正)
当時の事情を知る関係者の方からお話を伺う事ができました。
宝飾の世界では、このようなギザギザ加工を「ファセットカット」と言うそうです。
『「ファセットカット加工タイプ」を「Fタイプ」と呼称していた』ということです。

また、当時の時代背景として、製品名に英文字、または数字1文字を付けることが「カッコイイ」「ナウイ」と思われた時代であったそうで、この「Fタイプ」や「マチック−R」、「ビジネス−A」、「セイコー5」等のネーミングは『その影響で付けたのであろう』とのことでした。

また、1966年中旬頃のモデルから、ペットネームが「BUSINESS」に移行します。
これは、当時の日付・曜日付き自動巻腕時計がビジネス用として重宝されたこと、並行して発売された83系の「BUSINESS-A」や
40系の「ビジネスベル(ベルマチック)」との製品ラインナップの強化が背景としてあった、と推測しています。

セイコーセールス1966年5月より
セイコーマチックウィークデーター26石、83セイコーマチックウィークデーター30石に新しいニックネームSEIKOビジネスが誕生!

最近、ビジネスマンの間でセイコーマチックウィークデーター26石、83セイコーマチックウィークデーターが人気を呼んでおります。これらの時計は機能的な面で忙しい生活を送るビジネスマンにふさわしく、デザイン的にもすぐれており、又、価格の面でも最も手頃であり、SEIKOが自信を持っておすすめ出来る商品です。
そこでSEIKOでは、これらの時計をより強くビジネスマン主体のお客様に訴求するために、5月中旬より新しくニックネームをつけることにいたしました。セイコーマチックウィークデーター26石をSEIKOビジネス、83セイコーマチックウィークデーターをSEIKOビジネスAとしてマスコミ広告で強く宣伝して参ります。又、店頭でもお客様の目をひくために、各々SEIKOビジネス・SEIKOビジネスAのタグをつけます。お手持ちの商品につけるタグは、当社営業所に用意してあります。セールスマンにご請求ください。
これを機会に、ビジネスマンにふさわしい時計、SEIKOビジネス・SEIKOビジネスAをお客様にご推奨いただき、今後共お引立賜りますようお願い申し上げます。

5.当時の価格

ペ ッ ト ネ ー ム
CAL No.
石 数
側 質
防 水
現金正価
セイコーマチックウィークデーター
(セイコービジネス)
400
33石
SS/SS
標準防水
(WP30)
15,000
SGP/SS
17,000
6206
26石
SS/SS
12,500
SS/SS(Fタイプ)
13,500
SGP/SS
14,500
SGP/SS(Fタイプ)
15,500
GC/SS
19,000

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