56LORD MATIC
5601/5605/5606

Original:2005/03/21
Last Update:2010/05/30
Japanese text only


製品名:56ロードマチック

 キャリバーNo:5601A
  5605A(カレンダー)
  5606A(ウィークデーター)

 石数:23、25石

 略称:56LMA
  56LMC(カレンダー)
  56LMW(ウィークデーター)

 機械落径:25.60mm

 機械厚ミ:4.25mm

 テンプ振動数:21,600回/時

 発売開始(セイコーセールス資料):
  1968年5月2日

 最古確認個体:1968年2月

 最新確認個体:1975年7月

1.特徴

機械式自動巻腕時計の集大成とも言える新機構を搭載し、ビジネスウォッチとして圧倒的な販売実績を残した諏訪工場製の「マチック系」最終製品です。

セイコーロードマチック 特長と仕様
(’68 SEIKO紳士用ウォッチ技術解説書:1968年)より
 このたび、セイコーでは新製品「セイコーロードマチック」を開発しました。
「仕事をするあなたの腕時計」「腕にフィットする落ちついたスマートなデザイン」「便利な機能を豊富に備えた機能時計」として、あらゆる面で高い水準を行く高級紳士用腕時計です。

特徴
1.安定した精度と小型・薄型化
 これまでの機能時計は、付加機構が多くなるにつれて大型化し、厚くなり、時計としての機能性に欠ける傾向がありましたが、セイコーロードマチックは豊富な機能をコンパクトにまとめ、しかも精度の安定化と小型、薄型化の両面を十分満足させた機種です。

2.世界ではじめての日・曜日修正装置
 新しいメカニズムについては、常にリーダーシップをとってきているセイコーが、さらに使う人の立場にたって、研究開発した日付、曜日の早修正装置は、世界でもはじめての画期的な機構として注目されています。

3.使う人の好みにあわせられる曜文字
 
国際化時代にふさわしい、優れたメカニズムは、曜日カレンダーの文字を使う人の好みにあわせて和文字、英文字の選択を可能にしました。

4.バラエティに富んだデザイン
 コンパクトなムーブメントの特長を生かし、しかも取扱いが簡単で、安定した防水性が得られる、ワンピース防水ケースを開発しました。

5.信頼できる品質
 
かずかずのすぐれた付加機構を持つロードマチックは、組立やすさ、アフターサービス、系統的な耐久、衝撃、携帯テストなどあらゆる面から精度と品質を追求した結果、生まれた時計です。かならずや自信を持ってお客さまにおすゝめいただけます。

 56ロードマチックの「LORD」とは、どのような意味が有るのでしょう?
調べてみますと「LORD」とは、『統治者、君主、領主、首長、主人、支配者、権力者、神、主、キリスト、貴族、夫, 亭主』といった意味と、間投詞的『まぁ, おぉ』といった意味があるそうです。
 1956年に発売された手巻き「マーベル」は「驚異、驚くべき」→「驚く程立派な時計」という意味(セイコーニュースNo.4-1957.7に記述あり)で、1958年に最高級機「ロードマーベル」に進化を遂げ「マーベルの首長、主」というような意味合いが込められていた、と考えるのが自然では無いかと思っています。
 だとすると、「ロードマチック」は、自動巻腕時計の完成型としての「マチックの君主」「自動巻腕時計の統治者」といったところなのでしょうか??。

56ロードマチックが発売された1968年(昭和43年)は、62系セイコーマチック、83系の終焉の年でした。

西暦(年)
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
自動巻腕時計
主力製品群
 
セイコーマチックウィークデーター(400,6206,6218,6216)
   
 
83マチックスリム、マチック-R、ビジネス−A
   
 
51セイコーマチック、プレスマチック
 
 
56ロードマチック(5601,5605,5606)
     
56キングセイコー(5621,5625,5626)
     
56グランドセイコー(5641,5645,5646)
     
56デュオタイム
56KSヴァナック
     
クォーツ腕時計の時代(注)

(注)世界初のクォーツ腕時計の市販製品は、1969年12月25日に発売された「35SQ:アストロン」

上記の年表から明らかなようにロードマチックは、それまでの自動巻主力製品の「62系、83系」から名実共に「機械式自動巻腕時計の統治者」を引き継いだのです。
 更に、こうして見ますと、51系マチック、プレスマチックは第二精工舎亀戸工場の製品であったことから、諏訪の62系、83系→56系への流れとは「異系列のものであった」ということが見えて来ます。
(ただし、51系の存在は年代的にも62系、83系→56系への「橋渡し的」な役割を担っていた製品であると言えるでしょう。)

そして、1970年代のクォーツ腕時計の時代になっても56系は、「機械式自動巻腕時計の君主」として「56キングセイコー」「56グランドセイコー」「56KSヴァナック」「56デュオタイム」などを輩出した「基礎キャリバー」として1975年頃まで製造が続けられたのです。

 そんな中で1970年に登場した「56グランドセイコー」は、機械式自動巻腕時計の最後を飾る最高級品でした。
56系の薄型機械を生かしたケースデザインと文字板の日付曜日一体窓は、完成された「機能美」が感じられます。
そして、特にこの#7010のケース形状(画像)からは、56ロードマチックとの兄弟関係がはっきりと表れています。

当時発売されて間も無いクォーツは、量産体制が整っておらず、販売価格、製品としての安定性、信頼性では未だ機械式が優位であったのでしょう。
 ところが、1973年頃の製品カタログを見ると、形勢がクォーツ陣営へと逆転していることが見て取れます。
56グランドセイコーにもカラーグラデーション文字板&カットハードレックス製品が登場し、カタログのトップを飾る「最高級品」「特選品」のページを完全にクォーツに譲った形となっています。

2.外装

83ビジネス−Aの後期製品や、51マチック、プレスマチックから始まった文字板、ケース、金属ブレスの統一感を持たせた「トータルデザイン」の手法は、56ロードマチックの時代に完成の域に達した。
1970年代になると、カラーグラデーション文字板やカットハードレックスガラス、特殊合金側などの凝った加工を施したデザインの製品が多数登場した。
その70年代テイストを濃厚に漂わせる色使い、ポップな形状は後の「バナック」「アドバン」で頂点を極めた。
ケース、文字板の外装形状のバリエーションが豊富な事も特筆に値し、1975年当時の「SEIKOウォッチ外装部品セット表」では、56ロードマチックのケース形状だけでも何と113種類もの存在が確認できる。

「SEIKOウォッチ外装部品セット表」-1975-より引用

キャリバーNo.(略号)ペットネーム
側質
種類
5601(56LMA)56ロードマチック
SS
3
5605(56LMC)56ロードマチックカレンダー
SS
7
SGP
1
5606(56LMW)56ロードマチックウィークデーター
SS
84
SGP
16
NSA
1
TPDP
1
5619(56DMC)セイコーデュオタイムカレンダー
SS
1
5621(56KA)56キングセイコー
SS
6
GC
1
5625(56KAC)56キングセイコーカレンダー
5625(56KCM)56キングセイコークロノメーター
SS
22
SGP
4
GC
5
5626(56KAW)56キングセイコーウィークデーター
5626(56KWM)56キングセイコークロノメーター
SS
44
SGP
10
GC
5
NSA
1
5641(56GA)56グランドセイコー
SS
1
5645(56GAC)56グランドセイコーカレンダー
SS
5
GC
2
5646(56GAW)56グランドセイコーウィークデーター
SS
9
GC
2
18K
1

管理人は、この恐ろしいバリエーションの56系には敢えて手を出さず、ホドホドにしか集めておりません。
ハマったら怖そ〜ですから...(^^;)

側質略号
側 質
銀色側略号
SS
ステンレススチール側
NSA
超硬質合金側
TPDP
パラジュウムメッキベゼル付ステンレススチール側
金色側略号
SGP
金メッキ側
GC
ゴールドキャップ側
18K
18金側

外装で注目すべきは、裏蓋シリアルNo.である。
ロードマチックに限らず、従来のセイコー腕時計の裏蓋シリアルNo.の刻印は、頭2桁(製造年月)+連番(シリアルNo.)5桁の合計7桁であったが、このロードマチックの頃から他の機種も裏蓋シリアルNo.が4桁の合計6桁になっている。

5606−7020
(ワンピース防水ケース)
5601−9000
(ワンピース防水ケース)
5606−7230
1968年5月
1970年3月
1972年1月

 これは、何を意味しているのであろうか?...月間製造ロット数の減少、すなはち機械式腕時計の生産数の減少である。
従来の連番5桁(99999)であれば、月産10万個以内の万単位のロットを管理可能である。
それが連番4桁(9999)になると、月産1万個以下と言う事になる。
ここにも1970年代の機械式腕時計の落日の一端を見る事ができる。

3.機械

全く新しい中三針輪列を採用し、8306Aの4.8mm、5106Aの4.98mmより更に薄型の4.25mmになっている。
83系、51系の双方の設計を合わせたような印象で、誕生時期も83系、51系の直後であり、それを裏付ける。
手巻の感触は51系よりも更に好感触で、自動巻の手巻装置としては好ましいものである。

1968年の発売当初は5606A(ウィークデーター):23石、25石の2種類しか無く、後に5605A(カレンダー)23石、5601A(日付曜日なし)23石が発売された。
カレンダーのみの5605Aは、販売数も少なかったようだ。

(1).基礎輪列

二番車が中心からはずれた位置に有り、その軸にはめ込まれたマサツカナによって裏輪列と連絡する構造。二番車とマサツカナの関係は、他の機種の二番真と筒カナの関係と基本的には同じ。
また、脱進機のアンクル体が曲がっている事、秒針規正をテンプ(テン輪)を秒針規正レバーで直接停止させる方法で実現している点も特徴。

56ロードマチックのアンクル体
62セイコーマチックのアンクル体

機械外観

Cal:5601A
回転錘(ローター)を外した状態

(2).自動巻機構

83系の「ローラーロック反転車」、51系の「切換伝エ車」とは異なる形状の「切換伝エ車」を採用。
56系は外観から動作を確認できる機構になっており、51系の機構を改良した物と思われる。

回転錘(ローター)も「ボールベアリング」が組み込まれた薄型となっている。
ローターヘアラインの仕上げのバリエーションが数種類存在。

5606A 回転錘(ローター)

(3).カレンダー機構

世界初の日・曜修正装置を搭載。

リュウズ1段目 ゼンマイ巻
リュウズ2段目 日曜修正 右回転=曜日修正(曜文字選択)
左回転=日付け修正
リュウズ3段目 針合せ(秒針規正)

56系と言えば、悪名高い「日付/曜日修正機構の故障」がある。
書籍等でも紹介されたため、現在では、ヤフオクのQ&Aにおいても事前確認は常識かと思われる程有名になっている。

この故障の原因は、日曜修正を行う「揺動レバー」の「修正歯車」が樹脂製で、かつ、他の機種と比較して歯が小さいため、日付け修正不可時間帯(午後8〜午前1時)に日曜修正操作を行うと容易に破損してしまうことと、経年変化による自然破損である。
「修正歯車」に設定されている摩擦抵抗が減少して来ると、修正歯車が日車および曜車を回そうとする力に負けてスリップするようになってしまうため。また「修正歯車」の材質がプラスチックに変更された後期の部品では、経年劣化による「割れ」のため空回りしてしまうため。(訂正:2007年1月11日)
(ちなみに、「修正歯車」破損の状態でも、通常の運針、および、針送りによる日曜修正は可能である。
これは、リュウズ操作での日曜修正と、針送りによる日曜修正動作は、別系統である事を意味する。)


これを「設計ミス」「欠陥商品」などと言う向きもあるが、果たしてそうなのだろうか?

56系が製造された1960年末期〜1970年代前半はまさに「高度経済成長」の最中であり、世を挙げて「大量生産」「コストダウン」至上主義の時代であった。

同じ機能を少しでも安価に消費者に提供する事に固執した時代。並行して樹脂加工技術の急速な向上も金属部品の節約に拍車をかけたであろう事が想像される。
56系は、「修正歯車」以外にも樹脂製部品が採用されており、しかも56系初期製品の「修正歯車」は金属製であったと聞く。
この「設計ミス」「欠陥商品」も時代が生み出したものであると言えるのではないだろうか?
この材質変更は「設計ミス」や「コストダウン」などでは無く、日付け修正不可時間帯(午後8〜午前1時)に日曜修正操作を行った場合でも修正歯車を破損させないための機能改善であることが判明!。(訂正:2007年1月8日)

(日曜修正機構の解説は、文字による説明の限界があるため、後日解説画像を追加予定です。しばらくお待ち下さい。2005年3月21日)
(日曜修正機構の解説を画像を交え「56ロードマチックの弱点は?」としてページを追加しました!。2007年1月8日)

4.当時の価格(1973年)

ペ ッ ト ネ ー ム
CAL No.
石数
側質
防水
現金正価
56ロードマチック
5601A
23石
SS/SS
防水
13,000
5606A
SS/SS
14,000
SS/SS(ハードレックス付)
15,000
SS/SS(カットハードレックス付)
17,000
SGP/SS
18,500
SGP/SS(ハードレックス付)
19,500
5605A
25石
SS/SS
15,000
5606A
SS/SS
17,000
SS/SS(ハードレックス付)
18,000
SS/SS(カットハードレックス付)
20,000
SS/SS(カットハードレックス付、夜光付)
21,000
SGP/SS(ハードレックス付)
21,500

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