51SEIKOMATIC-Weekdater
(SEIKOMATIC-P)

5106

Original:2004/09/05
Last Update:2010/01/02
Japanese text only


製品名:51セイコーマチック33石
(SEIKOMATIC−P)

キャリバーNo:5106A

石数:33石

略称:51MW

機械落径:25.60mm

機械厚ミ:4.98mm

テンプ振動数:19,800回/時

発売開始(セイコーセールス資料):
 1967年3月

最古確認個体:
 1966年11月

最新確認個体:
 1969年6月

1.特徴

新機構を搭載し、ビジネスウォッチとしての市場拡大を狙った亀戸工場製の「セイコーマチック」です。

51セイコーマチック 33石:新製品紹介
(セイコーセールス:1967年3月)より
この51セイコーマチック33石は、自動巻、カレンダー機構を備えながら薄型化(4.98mm)され、さらに小型化(直径25.6mm)された新製品で、しかも次のようなかずかずの新しい機能がもりこまれております。
●カレンダー(日・曜日)は12時に瞬間的に変わります。
●日付修正機構はセイコー独特のリュウズ中央に組込まれた六角形プッシュボタン式。扱い易く、勿論日飛びなどの心配もありません。
●セコンドセッティング装置付。
●手巻き装置も併わせて採用しています。
●薄型の高級感あふれるデザインは、軽く、しかもしっくりと腕にフィットします。

標準小売価格 SS側WP(MB)………17,000円

 従来のマチック62系、83系は諏訪精工舎(注1)の製品でしたが、この51マチック−Pは第二精工舎亀戸工場の製品です。
 グランドセイコーも、それまでの諏訪精工舎製から、1966年製造開始の44グランドセイコーは第二精工舎亀戸工場で製造されており、更に、1968年には第二精工舎亀戸工場から45KS/45GSが登場。
 従来の「諏訪/亀戸」の住み分けを解消し「SEIKOグループ」としての製造工場の再編成、見直しがこの頃行われていた様です。

(注1):諏訪精工舎

長野県上諏訪。
1959(昭和34)年に「第二精工舎諏訪工場」と「大和工業」とが合併し設立されたもの。
初代セイコーマチック603の発売パンフレットの記述に「第二精工舎が開発しました」という記述がある。
第二=亀戸工場という先入観から「諏訪精工舎の間違いでは?」と管理人も思っていたが、これは初代セイコーマチックが製造された1959(昭和34)年〜1960(昭和35)年当時の「第二精工舎諏訪工場」のことであり、上記史実と一致する事が確認された。

 亀戸工場初のマチックながら、この51マチック−Pは83マチックの特長である「薄型」「手巻機構付加」の特長を継承し、更に「瞬間日送り機構」「プッシュボタン式日付修正機構」という亀戸流のこだわりが見られます。
 「瞬間日送り機構」は、同じ亀戸工場製の45KS/45GS、52KSなどにも搭載されている一方で、諏訪製の機械にはその後も「瞬間日送り機構」を搭載した機械は見当たりません。
ここにも両工場の設計思想、「セオリーの諏訪」「こだわりの亀戸」とでも言うべきものを見る事が出来ます。
 過去にも、日付付き腕時計の開発において、リュウズによる日付修正機構を付加した「クラウンセルフデーター(諏訪)」に対し、同機構を付けなかった「クロノスセルフデーター(亀戸)」の例。
薄型腕時計の開発において、既存のマーベルを極力薄くした「ライナー(諏訪)」に対し、全く新しい独自の輪列により当時の世界で最も薄い機械を実現した「ゴールドフェザー(亀戸)」の例などが見られます。

また、従来の62系、83系は「セイコーマチック」のみのペットネーム(注2)で、キャリバー(機械)とペットネームが一致していましたが、この51系は製品分類上は別グループである「セイコーファイブ」、「セイコーファイブデラックス」の機械としても使用されています。
(注2):マチックスリム、スリムデート、SEIKOMATIC-R、ビジネス、ビジネス−Aなどのペットネームも「マチックグループ」としての製品バリエーションであり、従来「マチック」と「ファイブ」は、販売戦略上も販売対象客層も明確に区別されていた。

2.外装

高級品にふさわしい落ち着きを感じさせる外装である。
1960年代後半の製品は文字板、ケース、金属ブレス加工技術の向上が感じられる。
後期の製品では、ベゼル、金属バンドに凝った加工を施したデザインの製品が登場し、次の「プレスマチック」への展開を予感させる。

(1).ケース

全てスクリューバックの防水ケース仕様。ケース形状は7種類と意外に少ない。
側質はSS、SGP、18Kの3種類。
SGP側が存在するケースは#7000、#7010、#7020の3種類のみ。
18K側は#8030の1種類のみ。

(2).文字板

ADのみ確認。
初期製品には6時上に「亀戸マーク」の表記が無いが、後期製品には「亀戸マーク」表記が有る。(後期文字板は1968年以降?)
「亀戸マークの有無」については、一概には言えないようです。
文字板番号により、亀戸マークの表示時期は異なるようです。

全体的な傾向としては、1967年前半(ケースシリアルNoより)は「マーク無し」。
1967年後半〜1968年以降に「マークあり」のようなカンジです。
う〜ん。やはり国産(SEIKO)は難しいです。(^^;)

5106−7000初期個体
(1966年11月)
画像提供:matic1969氏
5106−7000中期個体
(1967年11月)
5106−7000後期個体
(1968年7月)
第二精工舎亀戸工場のマークなし
DIASHOCK表記あり
DIASHOCK表記なし
第二精工舎亀戸工場のマークあり
同 左

裏蓋の変遷
初期個体(1966年11月)
画像提供:matic1969氏
中期個体(1967年11月)
後期個体(1968年7月)
裏蓋イルカマーク
裏蓋イルカマークが「SEIKO」
ケースシリアルNoの位置も変更
SEIKO」の下に第二精工舎
亀戸工場のマーク追加
ケースシリアルNoが従来の7桁から6桁になっている。
製造ロット数の単位が「万」から「千」に縮小されたのであろうか?

上記1966年11月個体の「イルカマーク」、および1967年1月個体の「SEIKO」を確認していることから、51マチックに関しては1966年末まで「イルカマーク」、翌67年初頭から「SEIKO」に移行したと推定。
裏蓋「イルカマーク」から「SEIKO」への移行は、他の62系マチック(BUSINESS)、83系マチック(BUSINESS−A)でも同様の傾向が見られる。

輸出専用と思われる製品で、文字板に「Presmatic」の植字ロゴを配した製品が見られるが、その機械は5106A(33石)であり、SEIKOMATIC−Pの輸出版をデザインする際にペットネームを外国人ウケする?Presmaticにしたものと推測される。
ケースNo.5106−9000
(2009/1/2:画像追加)

3.機械

8306Aに輪列の配置/構成は類似しているが、手巻の感触は83系よりも軽く、自動巻の手巻としては好ましいものである。
独自の「プッシュボタン式日付修正機構」は、耐久性に問題があったようで、現在残っている個体はプッシュボタンが壊れているものが多く見られる。
しかしながら、通常使用におけるこのボタン操作は2月と、30日までの月(4,6,9,11)の1年間に6〜7回しか押す必要はなく、実際のところ面白がって不必要に押すユーザが多かったのではないだろうか??(^_^;)

(1).基礎輪列

仕     様
ウィークデーター
セイコーファイブ
ファイブデラックス
キャリバーNo.
5106A(51MW)
5126A(51−5)
5139(51−5D)
石     数
33
23
27
機 械 落 径
25.60mm
機 械 厚 み
4.98mm
5.30mm
テ ン プ 振 動 数
5.5振動(19,800回/時)
自 動 巻 機 構
切  換  伝  エ  車  式
手 巻 機 構
日曜カレンダー瞬間送り
日 付 早 送 り
リ ュ ウ ズ プ ッ シ ュ 式
秒 針 規 正
微 動 緩 急

機械外観

5106A(33石)
5139A(27石)
テンプの「アミダ」と呼ばれる部分が十字型「4本アミダ」型となっている。
 従来の諏訪の機械はほとんど(全て?)が「2本アミダ」型である。
(一説によると「2本アミダ」は熱で楕円形に変型すると言われ、現行グランドセイコーの9S55も「4本アミダ」型を採用。)
 51系以降の52系、45系(亀戸)、61系、56系(諏訪)のテンプは「4本アミダ」型となっている。
51系の香箱車には、黒リングマークが印刷してある。
 これは、使用する油の指定で「セイコー自動巻ゼンマイ油 S−3」を使用する印である。
 従来の「セイコー自動巻ゼンマイ油 (記号なし)」は黒リングマークの無い自動巻香箱車に使用する。
5126A、5139Aとの相違点:
 5126A、5139Aは手巻機構が無く、代わりに巻車があり、矢印の方向にドライバーで回して巻上げる。
 香箱車、二番、四番、ガンギ車のホゾの形状、寸法が異なる。
 5126A、5139Aは微動緩急装置がない。

ダイヤフィックス(保油装置)の形状も62系、83系の物と51系は異なっている。

62系、83系(諏訪)
51系(亀戸)

これは、諏訪/亀戸の相違点というよりも設計上の問題(部品選択の結果)のようで、後の45KS/45GSは、亀戸の製品ながら、62系と同じ部品(画像左)が採用されている。
51系のダイヤフィックスは、もともと女持ち製品に使用されていた部品なので、機械を少しでも薄く小型化しようという設計意図があったのかも知れない。

(2).自動巻機構

83系の「ローラーロック反転車」に対して、51系は「切換伝エ車」となっており、同じ機能を実現するものであるが、機構は厳密には異なる。
(技術解説書では83系の「ローラーロック反転車」は「注油不可」であり、51系の「切換伝エ車」は「極く少量注油」となっている。)
後の56系ロードマチックの自動巻機構は「切換伝エ車」となっており、51系の機構を改良した物と思われる。

回転錘(ローター)も「ボールベアリング」が組み込まれた薄型となっている。
ローター刻印は朱色で刻印の配置が2種類存在。

5106A 回転錘(ローター)
前期ローター
後期ローター
1968年頃の製品から後期ローターの形式になっているようだ。
ローターの形状に変更が無いので、単なるデザイン上の変更?

(3).カレンダー機構

日・曜日の瞬間日送り機構は、世界的にも例は少ない。
リュウズの通常状態で、ゼンマイ巻。リュウズを1段引き出して回せば針合わせと秒針規正。リュウズの中心の六角形の日修正ボタンを押すと日修正が可能(曜日修正は午後8〜午前0時の間の往復で行う)。
瞬間日送り機構の採用により、日修正不可時間帯(一般的なカレンダー機構の場合、午後8時〜翌日1時まで)が無く、いつでも日付の修正が可能。

4.当時の価格

ペ ッ ト ネ ー ム
CAL No.
石数
側質
防水
現金正価
51セイコーマチック 33石
(SEIKOMATIC−P)
5106A
33石
SS/SS
防水
17,000
SS/SS(ハードレックス付)
18,500
SGP/SS
19,500
SGP/SS(ハードレックス付)
21,000
18K
120,000

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